令和5(2023)年度 研究委員会

令和5年度期 東北ブロック研究委員

任期;令和5年4月22日〜令和6年度第1回総会

 

     青森県   櫻本  和也(青森明の星短期大学)

     岩手県   熊谷   賢(専修大学北上福祉教育専門学校)

     秋田県  ◎保坂  和貴(秋田大学)

     宮城県   兎澤   聖(尚絅学院大学)

     宮城県   橋浦  孝明(東北生活文化大学短期大学部)

     山形県   白﨑  直季(羽陽学園短期大学)

     福島県   鈴木  翔太(福島学院大学)

                               ◎印は委員長

 

     協力委員  鈴木  享之(仙台青葉学院短期大学)

      〃    石森 真由子(東北福祉大学) 

      〃    安部 高太朗(郡山女子大学短期大学部)

      〃    三浦  主博(仙台白百合女子大学)

(  )内の所属は令和5年4月22日時点

◇令和5年度 東北ブロック共同研究テーマ

 

保育者の資質・専門性の向上に資する「保育実習内容チェックリスト」の開発

 

 全国保育士養成協議会東北ブロック(以下「東北ブロック」と略記する)においては、各県の代表で構成される「研究委員会」を平成21年度に組織し、継続して保育士養成に関わる調査・研究を行ってきた。平成25年度には、保育実習のミニマム・スタンダードとして「保育実習指導のガイドライン(東北ブロック版)」を策定し、以来、「東北ブロック」の養成校や実習先施設への調査・研究を行い、版を重ねている(現在、Ⅴ版)。本年度は、保育者*の資質・専門性の向上に関する議論の高まりを受け、保育士養成段階における保育実習内容の実質化・可視化を試みる。

 現在、保育士の専門性を高めるために保育士のキャリアパスにかかる研修などの整備が進められている(例えば、全国保育士会(2018)『保育士・保育教諭の研修体系』)。養成段階においても、保育士の専門的力量とは何であり、養成段階を修了するまでにどのような技能や力量を身につけなければならないかを具体化・明示化することは重要な課題である。倉森・上山・光本・渡邊(2021)は、実習指導経験のある保育者を対象に、保育者志望学生が養成段階を終了するまでに求める専門的力量について聞き取り調査を実施した。その結果、保育の現場は【子ども理解】、【生活援助の環境構成】、【遊びの環境構成】、【対人関係構築】の4領域について専門的力量を身につけることを求めていることが明らかとなった。また、同時に、それぞれの領域の力量が初任の段階では不十分であると捉えていることが明らかになっている。

 養成校と保育現場のあいだで養成段階の学生に求める力量や実習において重視する内容について齟齬があることは、これまでの「東北ブロック」の研究においても指摘されてきた。そこで、本年度の研究委員会では、免許・資格取得に際して実習を含む隣接諸領域(看護師養成、教員養成など)の実習内容の検討を通して、保育所・認定こども園を対象としてアンケートおよびヒアリングを実施し、「保育実習Ⅰ(保育所)」および「保育実習Ⅱ」において学生が学習・体験する実習内容についてチェックリストを開発することを目的とする。

 「指定保育士養成施設の指定及び運営の基準について」(厚生労働省雇用均等・児童家庭局長通知、平成30年4月27日一部改正)において、「保育実習Ⅰ」および「保育実習Ⅱ」において学習内容が定められているものの、保育の仕事は「わざ」や「暗黙知」と呼びうる知識・技能が多く、学習する具体的な内容について実習先の保育現場に一任する傾向が見られ、学生の体験や学習内容に大きなばらつきが見られる現状にある(例えば、指導実習における指導案作成にかかる指導等)。また、看護教育では、厚生労働省の指導により専門的力量が「技術項目」として明示化され、それらを修得するように実習が設計されているのに対し、保育の実習においてはそのような試みは見られない。保育は看護の領域のように専門的力量を「技術項目」として明示化し、到達度を評価することが難しいかもしれない。しかし、子どもとのかかわり、保護者との連携、環境構成など、自明とされるような保育者の知識・技能をチェックリストとして明示化することは、保育士としての専門的力量を具体化・実質化することにつながると考えられる。